僕がTRPGに夢中だった理由──想像力で旅する遊びとの出会い
高校時代、僕は寮生活をしており、そこには、マンガやゲームが好きな仲間がたくさんいて、毎日のように趣味の話で盛り上がっていました。
そんなある日、ひとりの友達が持ち込んだのが「テーブルトークRPG(TRPG)」という聞き慣れない遊びでした。
初めて遊んだのは『ロードス島戦記RPG』です。
ダイスとキャラクターシートを手に取りながら、僕たちはファンタジー世界へ旅立ちました。
正直なところ、最初はルールもよくわかっていませんでしたが、それでも、次々と展開される冒険の物語に、僕はすぐに引き込まれていったのです。
TRPGとは?コンピュータのない“ロールプレイングゲーム”
TRPGとは、「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム」の略で、紙とペンとサイコロを使って、参加者同士の会話で進めるゲームです。
ゲームにはルールブックがあり、プレイヤーはそれに従って自分のキャラクターを作成します。
戦士や魔法使い、盗賊など、さまざまな職業(クラス)や種族(人間、エルフ、ドワーフなど)を選ぶことができ、それぞれに得意不得意があります。
ゲームを進行するのは「ゲームマスター(GM)」と呼ばれる人で、舞台となる世界や状況を説明したり、プレイヤーの行動に対する結果を判断したりします。
プレイヤーは、与えられた状況の中でどう動くかを話し合いながら決め、その行動が成功するかどうかはサイコロを振って決定します。
つまり、物語の主人公はプレイヤー自身で、あらかじめ用意されたストーリーではなく、参加者の想像力と選択によって、物語が毎回変化していくのがTRPGの魅力です。
初めてのTRPGは「ロードス島戦記RPG」
僕が最初にプレイしたTRPGは、日本オリジナルの『ロードス島戦記RPG』でした。
このゲームは、当時人気だったファンタジー小説『ロードス島戦記』の世界をベースに作られたもので、システムも日本人プレイヤー向けに設計されていました。
やや複雑な海外TRPGに比べて、日本語で書かれた分かりやすいルールと、なじみやすい世界観が僕にはしっくりきました。
もともと僕は小説やゲーム、テレビアニメなどのファンタジー作品が大好きだったこともあり、「自分がその世界に入り込んで冒険できる」という感覚に夢中になりました。
数人の友達と会話と紙とサイコロで、剣を抜き、魔法を放ち、仲間とともにダンジョンを探検するという、画面もコントローラーもないのに、頭の中には鮮やかな冒険の風景が広がっていました。
D&Dやクトゥルフ神話TRPGにも手を出す
その後、僕は『Dungeons & Dragons(D&D)』や『クトゥルフ神話TRPG』といった、他の有名なTRPGにも手を出すようになりました。
D&Dはアメリカ発のTRPGで、いわばすべてのTRPGの原点です。
世界観やシステムは重厚で、自由度も高く、「本格的な冒険ができるゲーム」でした。
一方、クトゥルフ神話TRPGは、探索やホラーが中心のシナリオで、「恐怖」や「狂気」という感情までゲームに取り込んでいて、これまた刺激的でしたが、ただ、やっぱり僕はロードス島戦記の世界観とシステムが一番好きでした。
それは、もしかしたら日本人が作った世界だからかもしれませんし、キャラクターや地名に親しみやすさがあり、自分の中にすんなり入り込んできたからかもしれません。
「遊び」と「物語」が融合した体験
TRPGの魅力は、ただのゲームを超えた“物語体験”にあると思います。
普通のテレビゲームやボードゲームと違い、TRPGには決められた「正解」や「クリア条件」がありませんでした。
プレイヤーたちがどう行動するか、物語をどう導いていくかによって、結末はまったく違うものになります。
時には、仲間との意見の違いでパーティーが分裂したり、大事な場面でサイコロの目が悪くて致命的な失敗をしたり、そうした“偶然”すらも、物語の一部として楽しめるのが、TRPGならではの面白さでした。
物語は、誰かが作るものではなく、みんなで創り上げていくもので、それが、TRPGという遊びの本質だったと思います。
定年が近づく今だからこそ、TRPGの価値を再認識する
最近は昔のように仲間と集まってTRPGをする機会はありません。
でも、最近ではオンラインでTRPGを遊べる時代になってきました。
ボイスチャットや仮想マップツールを使えば、全国どこからでも同じ卓を囲むことができます。
そして何より、年齢を重ねた今だからこそ、「自分の人生経験を生かせる遊び」としてのTRPGに価値を感じます。
若い頃にはなかった視点や感性をキャラクターに投影することで、より深い物語が紡げるのです。
また、TRPGはコミュニケーションが中心の遊びなので、人とのつながりを自然に育めるという点でも、定年後の新たな趣味としてぴったりだと思います。
想像力に引退はない
高校時代に出会ったTRPGは、想像する楽しさを教えてくれました。
ダイスを振りながら、自分の言葉で世界を動かし、仲間と物語を作る経験は、今でも心に残っています。
年月が経っても、その冒険心は消えていません。
年齢を重ねても、自分の中にある想像力があれば、いつでも新しい物語を始められる。
TRPGは、想像力が続く限り、何度でも冒険できる人生のパートナーなのだと、改めて実感しています。
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