子どもの頃、将来どんな仕事に就きたいのかを真剣に考えたことはありませんでした。
「ロボットが好き」「ゲームが好き」「マンガが好き」
それははっきりしていたことです。
ガンダムを見て心を躍らせ、『ファイブスター物語(FSS)』では美しくも機械らしいモーターヘッドに魅了されました。
ただ、ヒーローとしてのロボットに憧れていたというより、「どういう構造で動いているのだろう」「こんな機械を考えられる人はすごいな」という気持ちの方が強かったように思います。
高校は普通科へ進学し、大学では機械制御工学科を選択。機械・電気・制御・ソフトウェア・材料工学を学ぶ中で、自分が本当に面白いと思える分野に出会いました。
それが回路設計です。
現在は回路設計エンジニアとして30年以上仕事を続けています。
振り返ると、子どもの頃に夢中になった「ロボットが好き」という気持ちは、回り道をしながらも確かに今の仕事につながっていました。
この記事では、その道のりを振り返ってみたいと思います。
ロボットへの憧れが、ものづくりへの興味の始まりだった
子どもの頃、多くの男の子がそうだったように、私もロボットアニメが大好きでした。
しかし、年齢を重ねるにつれ、興味の対象は少しずつ変わっていきます。
「強いロボット」よりも、「機械としてリアリティのあるロボット」に惹かれるようになったのです。
特に印象に残っているのが、『ファイブスター物語(FSS)』に登場する初期のモーターヘッドです。
現在のゴティックメードも魅力的ですが、私が特に好きなのは初期デザインでした。
フレームがあり、装甲があり、関節があり、まるで巨大な工業製品のような説得力がありました。
「本当に動きそうだ。」
そんな感覚を覚えたのを今でもよく覚えています。
当時は理由を言葉にできませんでしたが、今振り返ると、私はロボットではなく**”機械”**に魅力を感じていたのだと思います。
「理系が得意」だった普通科高校時代
高校は工業高校ではなく、ごく普通の普通科高校へ進学しました。
当時から将来の仕事を具体的に決めていたわけではありません。
「理系へ進もう。」その程度の考えでした。
理由は単純で、数学や物理など、理数系科目の方が成績が良かったからです。
逆に国語や社会は決して苦手ではありませんでしたが、「好きか」と聞かれれば、やはり数学や物理の方が面白いと感じていました。
公式を覚えるだけではなく、「なぜそうなるのか」を考えることが好きだったのです。
将来エンジニアになるというよりも、「理系へ進めば自分に合っているだろう」という自然な流れで大学受験を考えていました。
今思えば、この時点でほぼ人生の方向性が決まっていたのだと思います。
機械制御工学で広がった世界
大学では機械制御工学へ進学しました。
「機械」と聞くと、エンジンや工作機械だけをイメージする人も多いかもしれません。
しかし、実際には学ぶ内容は非常に幅広いものでした。
機械設計だけではなく、
- 制御工学
- 電気電子工学
- ソフトウェア
- 材料工学
など、ものづくりに必要な知識を横断的に学びます。
入学当初は、どの分野も新鮮でした。
それまで学校で学んできた数学や物理が、「実際の機械を動かすための知識」としてつながっていく感覚は非常に面白く、毎日が発見の連続でした。
「こんなふうに機械は動いているのか。」
「センサーってこういう仕組みなんだ。」
教科書の中だけだった知識が、現実のものづくりへ結び付いていく感覚がありました。
電気という分野に一番惹かれた理由
大学で学ぶ中で、一番興味を持ったのが電気電子分野でした。
きっかけは、当時急速に普及し始めていた小型電子機器です。
携帯電話。
MP3プレーヤー。
デジタル家電。
今では当たり前ですが、当時は「こんなに小さな機械でここまでできるのか」と驚かされる製品が次々と登場していました。
機会があるたびに中身を見てみると、そこには必ず緑色のプリント基板があります。
部品が整然と並び、細い配線が張り巡らされた一枚の基板。
「この基板を設計している人がいるんだ。」
そう思った瞬間、不思議なくらい心が動きました。
外から見えるデザインではなく、機械の中で製品を動かしている心臓部。
そこに強く魅力を感じたのです。
それまで漠然としていた進路が、その頃から少しずつ形になっていきました。
「回路設計の仕事をしてみたい。」
そう考えるようになったのです。
大学で学んだことが現在の仕事につながった
大学では、機械だけではなく、電気、制御、ソフトウェア、材料と幅広い分野を学びました。
その経験は、結果として現在の仕事にも大きく役立っています。
回路設計は、電気の知識だけで完結する仕事ではありません。
製品全体を理解し、
「この部品は熱に耐えられるだろうか。」
「機械構造との干渉はないか。」
「ソフトウェアとどう連携するのか。」
といった視点も必要になります。
学生時代は「なぜこんなにいろいろ勉強するのだろう」と思うこともありました。
しかし、社会人になって振り返ると、どの授業も決して無駄ではありませんでした。
幅広く学んだからこそ、製品全体を見る視点が身についたのだと思います。
卒業研究で取り組んだサーボモータ制御
大学生活の集大成となる卒業研究では、PWM制御とフィードバック制御によるサーボモータの制御をテーマに取り組みました。
当時は、「ロボットが動く仕組み」を学問として理解できることに大きな魅力を感じていました。
サーボモータは、産業用ロボットや工作機械、自動化設備など、位置や速度を正確に制御するために欠かせないモータです。
一方で、モータは単純に電気を流すだけでは、思い通りには動いてくれません。
目標の位置まで正確に動かすためには、現在の位置を検出し、その情報をもとにモータの回転を細かく調整する必要があります。
そのために利用されるのがフィードバック制御です。
また、モータへ供給する電力を効率よく調整するために使用したのがPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御でした。
大学に入学するまで、このような技術があることすら知りませんでした。
しかし研究を進める中で、「ロボットや機械が正確に動く裏側には、こうした制御技術があるのか」と理解できたことは、大きな発見でした。
もちろん研究は順調だったわけではありません。
思ったような動きをしない。
制御パラメータを変更しても改善しない。
原因を探すために何度も測定を繰り返し、少しずつ条件を変えながら試行錯誤を続けました。
苦労は多かったものの、自分の調整によってモータが狙いどおりに動いた瞬間の達成感は、今でも忘れられません。
この経験は、現在の回路設計の仕事にも通じています。
「原因を考え、仮説を立て、検証を繰り返す。」
その基本姿勢は、学生時代から変わっていません。
回路設計エンジニアとして30年以上働いて感じること
大学卒業後は、希望していた回路設計の仕事に就きました。
当時、携帯電話やMP3プレーヤーなど、小型電子機器の進化は目覚ましいものでした。
私が憧れていた「緑色のプリント基板」を設計する仕事に携われたことは、とても嬉しかったことを覚えています。
しかし、実際の仕事は決して華やかなことばかりではありません。
設計した回路が一度で動くことは、ほとんどありません。
ノイズの問題。
熱設計。
部品の選定。
コストとのバランス。
限られたスペースへの実装。
製品として求められる条件は数多くあります。
「この部品の方が性能は良いが価格が高い。」
「サイズを小さくすると放熱が難しくなる。」
「ノイズ対策をすると基板サイズが大きくなる。」
設計とは、さまざまな条件を満たす最適解を探す仕事です。
だからこそ面白いのです。
学生時代は「設計には正解がある」と思っていました。
しかし実際には、正解は一つではありません。
複数の選択肢の中から、その製品に最も適した答えを見つけ出すことが、設計者の役割だと感じています。
30年以上この仕事を続けていますが、今でも新しい技術が次々と登場します。
学び続ける姿勢が求められる仕事だからこそ、飽きることがありません。
子どもの頃の「好き」は、今も仕事の原点になっている
振り返ると、私は子どもの頃から一貫して「機械が好き」でした。
ただし、それは「ロボットに乗りたい」という夢ではありません。
「どうして動くのだろう。」
「どんな仕組みなのだろう。」
そんな疑問を持つことが好きだったのです。
大学で電気や制御を学び、回路設計という仕事に出会い、その疑問を仕事として追求できるようになりました。
もちろん、ロボット好きだから全員がエンジニアになるわけではありません。
私自身も、高校生の頃は将来の仕事を決めていたわけではありませんでした。
普通科高校へ進学し、「理系に向いているから理系へ進もう」と考えていただけです。
大学でさまざまな分野を学んだからこそ、自分が本当に興味を持てる分野を見つけることができました。
その意味では、進路は最初から決まっている必要はないのだと思います。
興味を持ったことを学び続ける中で、自分に合った仕事と出会えることもあります。
理系を目指す学生へ伝えたいこと
この記事を読んでいる方の中には、
「理系へ進もうか迷っている。」
「エンジニアに興味がある。」
という学生の方もいるかもしれません。
もし今、「ものづくりが好き」「機械が好き」「電子機器の仕組みが気になる」という気持ちがあるなら、その興味を大切にしてほしいと思います。
将来の仕事を高校生の時点で決める必要はありません。
私もそうでした。
大学で幅広く学ぶ中で、「これがやりたい」と思える分野に出会いました。
大切なのは、興味を持ったことを深く知ろうとする姿勢です。
その積み重ねが、自分らしい進路につながっていくのではないでしょうか。
まとめ
子どもの頃、ロボットが好きだった私は、将来回路設計エンジニアになるとは思ってもいませんでした。
普通科高校で理系を選び、大学では機械制御工学科へ進学。
機械・電気・制御・ソフトウェア・材料工学を学ぶ中で、電気回路の面白さに魅力を感じました。
そして、ガラケーやMP3プレーヤーの中にある緑色のプリント基板を見て、「この基板を設計する仕事がしたい」と思ったことが、現在の仕事につながっています。
30年以上回路設計に携わった今でも、製品が完成し、自分が設計した基板が思いどおりに動いた瞬間の喜びは変わりません。
子どもの頃に感じた「機械って面白い」「どうして動くんだろう」という純粋な興味は、形を変えながら今も仕事の原点になっています。
もしこの記事が、理系への進学やエンジニアという仕事に興味を持つきっかけになれば、とても嬉しく思います。
よくある質問(FAQ)
Q. 普通科高校から回路設計エンジニアになることはできますか?
もちろん可能です。私自身も普通科高校から大学の機械制御工学科へ進学し、その後回路設計エンジニアになりました。大学で専門知識を学ぶ機会は十分にあります。
Q. 回路設計には機械の知識も必要ですか?
必要です。製品は電気だけで完成するものではありません。機械構造や材料、熱設計、ソフトウェアなど、幅広い知識があるほど設計の幅が広がります。
Q. ロボットが好きな人はエンジニアに向いていますか?
必ずしも全員が向いているとは言えませんが、「仕組みを知りたい」「どうすればもっと良くなるかを考えるのが好き」という人は、エンジニアの仕事との相性が良いと感じます。
Q. 30年以上働いても回路設計は面白いですか?
技術は常に進歩しているため、新しい知識を学ぶ機会が多くあります。毎回異なる課題に向き合う仕事なので、今でも新鮮な気持ちで設計に取り組んでいます。
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