「ゲームばかりしていて将来大丈夫なの?」
子どもの頃、一度はそんな言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
私もファミコン世代として育ち、ドラゴンクエストやファイナルファンタジー、フロントミッションなど、数え切れないほどのゲームを遊んできました。
そして現在は、回路設計エンジニアとして30年以上ものづくりに携わっています。
設計した製品が市場に出るまでには、数え切れないほどの失敗や試行錯誤がありました。
しかし振り返ると、その考え方の多くはゲームから自然と身についたものだったと感じています。
もちろん、ゲームをしているだけで優秀なエンジニアになれるわけではありません。
ですが、ゲームには仕事でも役立つ「考える力」を鍛える要素が数多く詰まっています。
今回は、30年間回路設計に携わってきた経験から、ゲームが仕事に役立った5つの理由を紹介します。
ゲームは遊びではなく「考える訓練」だった
子どもの頃は、ただ純粋にゲームを楽しんでいました。
しかし今思えば、多くのゲームは「考えること」をプレイヤーに求めています。
例えばRPGなら、
- 次はどこへ行くべきか
- お金は今使うべきか
- レベル上げは必要か
- ボス戦までに何を準備するか
シミュレーションゲームなら、
- 限られた資金をどう使うか
- 部隊をどう配置するか
- どの装備が最適なのか
アクションゲームなら、
- 相手の動きを読む
- タイミングを見極める
- 失敗から学ぶ
どのジャンルでも共通しているのは、「考えて改善する」というサイクルです。
私は特に次のような作品に大きな影響を受けました。
- ドラゴンクエスト
- ファイナルファンタジー
- フロントミッション
- カルネージハート
- グランツーリスモ
- タクティクスオウガ
それぞれジャンルは異なりますが、単なる娯楽ではなく、問題解決能力や論理的思考を自然に鍛えてくれるゲームでした。
そして、その経験が現在の回路設計という仕事につながっています。
問題を分解する力が身についた
回路設計の仕事では、毎日のようにトラブルが発生します。
例えば、「電源が入らない」という現象一つでも、
- 電子部品の不具合なのか
- 配線なのか
- 半田不良なのか
- ノイズなのか
原因は何十通りも考えられます。
経験の浅い頃は、原因が分からず途方に暮れたこともありました。
しかし冷静に考えると、この考え方はゲームとまったく同じなのです。
例えばRPGでボスに勝てない場合、「ゲームが悪い」とは考えません。
まず、
- レベル不足か
- 武器が弱いのか
- 防具が不足しているのか
- 戦い方が悪いのか
一つずつ原因を切り分けます。
原因が分かれば、次にやるべきことも見えてきます。
これは設計でも全く同じです。
問題を細かく分解し、一つずつ確認していく。
この考え方は、ゲームを通して自然に身についていました。
試行錯誤する習慣が身についた
設計という仕事に「一発で完成」はほとんどありません。
例えば新しい基板を作るとします。
最初から完璧に動くことは少なく、
- 部品変更
- 配線変更
- 定数変更
- ノイズ対策
何度も改善を繰り返します。
若い頃は、「失敗してはいけない」と思っていました。
しかし経験を積むうちに、「失敗することが前提」だと考えるようになりました。
この考え方もゲームから学んだものです。
例えばフロントミッションでは、機体を自由にカスタマイズできます。
- 武器を変更する。
- 脚部を変更する。
- 重量を減らす。
- 耐久力を上げる。
実際に戦わせてみると、「この装備では火力不足だった」「機動力が足りない」「重量オーバーだった」ということがよくあります。
そこで再び装備を見直し、もう一度挑戦します。
まさにPDCAサイクルそのものです。
仕事でも同じで、一度失敗したから終わりではありません。
改善して、再び試すというこの繰り返しが、より良い製品を生み出します。
ゲームのおかげで、「失敗は悪いことではない」という考え方が自然と身についたのです。
最適解を考えるクセがついた
私が特に影響を受けたゲームの一つがフロントミッションでした。
このゲームでは、ヴァンツァー(人型兵器)のパーツを自由に組み合わせ、自分だけの機体を作ることができます。
しかし、強いパーツだけを装備すればよいわけではありません。
例えば、
- 重い武器を積めば火力は上がる
- しかし重量が増えて機動力は落ちる
- 軽量化すれば動きやすい
- しかし防御力が不足する
どれか一つを優先すると、別の性能が犠牲になります。
つまり、「完璧な機体」は存在しません。
限られた条件の中で、最適なバランスを考える必要があります。
この感覚は、現在の回路設計でもまったく同じです。
例えば製品を設計する際には、
- コストは下げたい
- 消費電力も減らしたい
- サイズは小さくしたい
- 発熱も抑えたい
- ノイズにも強くしたい
という複数の要求があります。
しかし、すべてを100点にすることはできません。
設計とは、「何を優先し、何を妥協するか」を決める仕事です。
この「最適解を探す考え方」は、ゲームを通して自然に身についた大きな財産だと感じています。
長期的に考える力が身についた
ゲームには、「今だけ」を考えていては攻略できない作品が数多くあります。
特にRPGでは、その場しのぎで強い武器を買ってしまうと、後半で資金不足に陥ることがあります。
経験値を効率よく稼ぐタイミングや、貴重なアイテムをいつ使うかなど、「先を見据えた判断」が重要になります。
子どもの頃は深く意識していませんでしたが、知らず知らずのうちに長期的な視点が身についていたように思います。
この考え方は、回路設計でも非常に重要です。
例えば新製品を設計する際には、現在だけでなく数年先まで見据える必要があります。
- この部品は長期間供給されるのか
- 将来的に性能アップが必要になった場合、対応できる設計になっているか
- 修理や保守はしやすいか
- コストダウンの余地は残されているか
目先の性能だけを追い求めた設計では、製品寿命が短くなったり、後から大きな改修が必要になったりすることがあります。
若い頃は「まず動けばいい」と考えていた時期もありました。
しかし経験を積むにつれ、「将来困らない設計」を考えることが増えました。
ゲームで培った「先を読む力」は、長年の設計業務でも確実に役立っています。
最後まで諦めない力が身についた
ゲームには何度挑戦しても勝てないボスや、高難易度のステージがあります。
私も子どもの頃は、何度もゲームオーバーになりました。
「今日は無理だ」と思って電源を切り、翌日また挑戦する。
少し戦い方を変えたり、レベルを上げたりして、ようやく勝てたときの達成感は今でも覚えています。
仕事でも同じような経験が数え切れないほどありました。
例えば、新しく設計した基板がまったく動作しなかったことがあります。
原因が分からず、
- オシロスコープで波形を確認する
- 電圧を測定する
- 配線を一つずつ追う
- 部品を交換する
そんな作業を何日も繰り返しました。
一日中調査しても成果が出ないこともあります。
しかし、少しずつ仮説を立て、検証を重ねることで原因が見えてきます。
そして問題が解決した瞬間は、ゲームでラスボスを倒した時と同じような達成感があります。
回路設計は「諦めたら終わり」の仕事です。
最後まで粘り強く考え続ける姿勢は、ゲームによって鍛えられた大切な力だと感じています。
実際にゲーム経験が仕事で役立った3つの場面
ここでは、私自身が「ゲームをやっていて良かった」と感じた場面を紹介します。
ノイズ対策で原因を一つずつ切り分けた
ある製品で、EMC試験に合格できないことがありました。
最初は原因がまったく分かりません。
そこで、
- 電源ライン
- クロック配線
- グランド
- ケーブル
など、可能性を一つずつ確認しました。
まるでゲームで攻略法を探すように仮説を立て、検証を繰り返した結果、原因を特定できました。
「問題を分解して考える」というゲームで身についた考え方が、そのまま活かされた瞬間でした。
限られた条件で最適な設計を考えた
設計では、理想だけを追い求めることはできません。
例えば、
- コストは下げたい
- 性能は上げたい
- 消費電力は減らしたい
- サイズも小さくしたい
すべてを満たすことは難しく、どこかでバランスを取る必要があります。
これは『フロントミッション』で機体をカスタマイズするときの感覚とよく似ています。
「この武器を積むなら重量が増える」
「防御力を上げると機動力が落ちる」
そんなトレードオフを考える経験は、実際の設計にも通じるものがありました。
若手エンジニアへの指導
後輩へ設計を教える立場になってから感じたことがあります。
設計とは、答えを覚える仕事ではありません。
考え方を身につける仕事です。
私は説明するとき、「ゲーム攻略と同じだよ。」と話すことがあります。
ボス戦では、負けた理由を考え、装備や戦術を見直します。
設計も同じです。
失敗の原因を分析し、改善策を考える。
ゲームを例にすると、若手にも伝わりやすく、理解が深まることが多くありました。
ゲームは遊びだからこそ学べることがある
近年では「ゲームは教育に悪い」という意見だけでなく、「思考力や問題解決能力を育てる」という研究も増えています。
もちろん、長時間ゲームばかりしていては生活や健康への影響も考える必要があります。
しかし、適度に楽しみながら考える習慣を身につけられる点は、大きな魅力です。
ゲームでは、
- 自分で考える
- 失敗する
- 原因を探す
- 改善する
- 再挑戦する
というサイクルを、誰かに言われることなく自然に繰り返します。
この経験は、仕事だけでなく、勉強や趣味、人間関係など、さまざまな場面で活かせる力につながります。
私自身、30年以上エンジニアとして働いてきた今でも、新しい課題に直面すると「まず原因を整理しよう」と考えます。
その思考の原点には、子どもの頃に夢中になったゲームがあるのかもしれません。
まとめ|ゲームで培った「考える力」は一生の財産になる
ゲームは、ただ時間を消費するだけの娯楽ではありません。
遊びの中で自然と、
- 問題を分解する力
- 試行錯誤する習慣
- 最適解を探す思考
- 長期的な視点
- 最後まで諦めない粘り強さ
を身につけることができます。
私が30年以上回路設計エンジニアとして仕事を続けられたのも、こうした考え方が土台にあったからだと感じています。
もちろん、ゲームをするだけで仕事ができるようになるわけではありません。
しかし、ゲームで得た経験を「考える習慣」として現実に活かせれば、それは大きな強みになります。
もし保護者の方が「ゲームばかりしていて大丈夫だろうか」と不安に感じているなら、遊ぶ内容や時間を工夫しながら、子どもが自ら考え、挑戦し、失敗から学ぶ機会として見守ることも一つの選択肢です。
そしてゲームが好きな社会人の方には、ぜひ一度振り返ってみてください。
夢中になって攻略した経験、何度も挑戦してクリアした経験、限られた条件で最適解を考えた経験。
その一つひとつが、今の仕事や人生を支える力になっているかもしれません。
よくある質問(FAQ)
Q1. ゲームは本当に仕事に役立ちますか?
ゲームだけで仕事のスキルが身につくわけではありません。しかし、問題解決力や論理的思考、試行錯誤する姿勢などは、多くの仕事で活かせる能力です。
Q2. エンジニアにおすすめのゲームジャンルは?
シミュレーションゲームやパズルゲーム、ストラテジーゲーム、自由度の高いRPGは、計画性や分析力を養いやすいと感じます。私自身は『フロントミッション』のように、カスタマイズや戦略を重視する作品から多くを学びました。
Q3. 子どものゲームは制限したほうが良いですか?
時間管理は必要ですが、一律に否定する必要はありません。ゲームの内容や遊び方次第では、考える力や挑戦する姿勢を育てる機会にもなります。
Q4. ゲーム経験は設計職以外でも役立ちますか?
はい。営業、企画、プログラマー、管理職など、課題を分析し改善策を考える仕事であれば、多くの場面でゲームで培った思考法を応用できます。
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