「子どもの頃に好きだったことは、大人になっても人生に影響する。」
私はこの言葉は本当だと思っています。
幼い頃からロボットが大好きでした。
毎週テレビの前に座り、ロボットアニメに夢中になり、成長するにつれてゲームや漫画からも多くの影響を受けました。
振り返ると、私の興味は「ロボットそのもの」から、「どうやって動いているのか」という仕組みへと少しずつ変化していきました。
そして大学ではモーター制御を研究し、最終的に選んだ仕事はロボット開発ではなく回路設計エンジニアでした。
現在では30年以上、電子回路の設計に携わっています。
この記事では、ロボット好きだった少年がどのような経験を経て回路設計エンジニアになったのかを、実体験を交えながら紹介します。
同じように理系への進路を考えている人や、ものづくりに興味がある人の参考になれば幸いです。
ロボットとの出会いはスーパーロボットだった
幼少期に夢中になったロボットアニメ
私が最初に好きになったロボットは、いわゆる「スーパーロボット」でした。
『鋼鉄ジーグ』『ゲッターロボ』『勇者ライディーン』『六神合体ゴッドマーズ』など、毎週テレビで放送されるロボットアニメを楽しみにしていました。
当時は難しいことは考えていません。
「とにかく強くて格好いい。」
それだけで十分でした。
巨大なロボットが悪を倒す姿に胸を躍らせ、「自分もこんなロボットに乗ってみたい」と本気で思っていました。
ガンダムがロボットへの考え方を変えた
小学生になると、私のロボット観を大きく変えた作品が現れます。
それが『機動戦士ガンダム』でした。
それまで見ていたロボットとは違い、ガンダムは「兵器」として描かれていました。
ロボットは正義の味方ではなく、戦争の中で運用される軍事兵器。
子どもながらに、それまでとは違うリアリティを感じました。
さらに大きかったのは、ガンプラブームです。
アニメで見ていたモビルスーツがプラモデルとなり、自分の手で組み立てられるようになりました。
平面だったアニメの世界が立体となり、「実際に存在しそうな機械」として感じられるようになったのです。
この頃から、「ロボットはどうやって動くのだろう」と考えるようになりました。
▼“成熟の白”ニューガンダムというモビルスーツについて▼
中学・高校でロボットはさらに現実に近づいた
パトレイバーで「働くロボット」を知る
中学生になると、『機動警察パトレイバー』に出会います。
この作品のロボットは、戦争のためだけではありません。
建設現場で働き、警察で事件を解決するために使われています。
つまり、社会で役立つ機械として描かれていました。
「ロボットは未来の生活を支える存在になるかもしれない。」
そんなことを自然に考えるようになりました。
▼“現場の白き相棒”パトレイバーのイングラムに惹かれて▼
FSSで設計という世界に興味を持つ
高校時代には『ファイブスター物語(FSS)』にも夢中になりました。
もちろん、美しいロボットデザインにも魅力を感じましたが、それ以上に惹かれたのは、その背後にある設定です。
細かく作り込まれた機体性能。
設計思想。
開発者の存在。
単なるロボットではなく、「設計された機械」として描かれていることに強く惹かれました。
今振り返ると、この頃から私はロボットを見る視点が少し変わっていたのだと思います。
「格好いい」だけではなく、
「どう設計されているのだろう。」
そんなことを考えるようになっていました。
▼なぜ『ファイブスター物語』の初期メカの駆動音とデザインは心に残るのか▼
ゲームが教えてくれた「制御」という世界
カルネージハートとの出会い
大学時代に出会ったゲームが、私の考え方をさらに大きく変えました。
それが『カルネージハート』です。
このゲームでは、ロボットを直接操作することはありません。
プレイヤーが行うのは、AIチップやフローチャートを組み合わせて、ロボットの行動を設計することです。
「敵を見つけたら攻撃する。」
「ダメージが大きければ逃げる。」
「障害物を避ける。」
こうした判断をすべて自分でプログラムします。
最初は思うように動きません。
敵に突っ込んでしまったり、壁にぶつかったり、何もしないまま破壊されたり。
しかし、原因を考え、フローチャートを修正すると、少しずつ理想どおりに動くようになります。
この体験を通じて、私は初めて気付きました。
「ロボットは、ただ機械を作れば動くものではない。」
制御する技術があって初めてロボットになるのだ、と。
▼ロジカル思考の原点は『カルネージハート』だった▼
フロントミッションで現実のロボットを知る
もう一つ、大きな影響を受けた作品があります。
それが『フロントミッション』です。
このゲームでは、ロボットはヒーローではありません。
現実の戦車や装甲車の延長線上にある兵器として描かれています。
武器を交換し、脚部を変更し、重量バランスを考えながら機体を組み上げる。
まるで開発者や整備士になったような感覚でした。
私は以前、このゲームについての記事も書きましたが、プレイするたびに「設計する面白さ」を感じていました。
気付けば、私の興味はロボットそのものではなく、「どのような仕組みで動き、どう制御されているのか」へと変わっていたのです。
▼フロントミッションとは?リアルロボットゲームの最高傑作といわれる理由▼
卒業研究で「電気」の面白さに気付いた
大学では電子工学を学び、卒業研究ではモーターのPWM制御とフィードバック制御をテーマに研究を行いました。
それまでの私は、「ロボットが好き」という気持ちはあっても、漠然とした憧れに近いものでした。
しかし、この研究が私の進路を決定づけることになります。
研究では、モーターを単純に回すだけではありません。
PWM(Pulse Width Modulation)を用いて回転数を制御し、センサーから取得した情報を利用してフィードバックをかけ、狙った速度や動きを実現する仕組みを構築しました。
研究を進める中で、私はロボットが動く仕組みを実際に体験しました。
センサーが情報を取得する。
その情報を制御ソフトが判断する。
回路が信号を出力する。
そしてモーターが回転する。
教科書で学んだ知識が、一つのシステムとして目の前で動き始めた瞬間でした。
もちろん、最初から思いどおりにはいきません。
モーターが振動したり、目標速度に到達しなかったり、制御が不安定になったり。
原因を調べ、オシロスコープで波形を確認し、回路を見直し、ソフトウェアを修正する。
その繰り返しでした。
しかし、不具合を一つずつ解決し、思いどおりに制御できたときの達成感は、今でも忘れることができません。
この研究を通じて気付いたことがあります。
それは、私が本当に興味を持っていたのは、ロボットそのものではなく、ロボットに命を吹き込む「電気」と「制御」の世界だったということです。
ロボットを作る仕事ではなく、回路設計を選んだ理由
卒業研究を終えた頃には、自分が進みたい道がはっきり見えていました。
それはロボットメーカーではなく、回路設計エンジニアという仕事です。
ロボットは多くの技術で成り立っています。
機械設計。
ソフトウェア開発。
センサー技術。
通信技術。
そして、それらをつなぐ電気回路。
私は、その中でも電気回路に最も魅力を感じました。
どれほど優れた機械でも、どれほど高度なソフトウェアでも、電気が正しく流れなければ動きません。
センサーの信号を受け取り、CPUへ伝え、必要なタイミングでモーターを駆動する。
まるで人間でいう神経のような役割を担うのが電子回路です。
私はその「縁の下の力持ち」のような存在に魅力を感じました。
もう一つ、現実的な理由もありました。
当時から、電気設計の技術は幅広い業界で必要とされていました。
自動車、家電、産業機械、医療機器、通信機器など、どの分野でも電子回路は欠かせません。
「電気設計の技術を身につければ、どの業界でも必要とされる技術者になれる。」
そう考えたことも、回路設計を選んだ理由の一つです。
子どもの頃の夢だけではなく、将来性も考えた現実的な選択でした。
▼回路設計の仕事についてはこちら▼
30年間、回路設計を続けて分かったこと
社会人になってからの30年間は、決して順風満帆ではありませんでした。
配属された当初は、設計ではなく評価業務からのスタートでした。
毎日のように試験を行い、不具合を見つけ、原因を調査する日々です。
「早く設計がしたい。」
そう思ったことも何度もありました。
しかし、今振り返ると、この経験が設計者としての土台になっています。
なぜ壊れたのか。
なぜ誤動作したのか。
なぜノイズが発生したのか。
原因を論理的に考える習慣は、卒業研究で繰り返した試行錯誤と全く同じでした。
現在でも、新しい製品を設計するときには、
「まず仮説を立てる。」
「測定する。」
「原因を分析する。」
「改善する。」
という流れを繰り返しています。
ものづくりは、一度で正解が出る世界ではありません。
試行錯誤を積み重ねることこそが、設計という仕事の本質なのだと感じています。
▼回路設計技術者に向いている人、必要なスキルについてはこちら▼
ロボットへの憧れは、今も変わらない
私はロボット開発者にはなりませんでした。
それでも、ロボットへの憧れが消えたことは一度もありません。
今でも新しいロボット技術のニュースを見るとワクワクします。
人型ロボット。
産業用ロボット。
AIを活用した自律制御。
子どもの頃に夢見た世界が、少しずつ現実になっています。
そして今は、子どもの頃とは違う夢があります。
重い障害のある娘の生活を支えるロボットが、もっと身近な存在になってほしいということです。
移動を助けるロボット。
着替えを支援するロボット。
入浴や排せつをサポートするロボット。
技術が進歩すれば、多くの家族の負担を軽くできるはずです。
回路設計という仕事を続けてきたからこそ、そうした技術が決して夢物語ではないことも分かります。
だからこそ、これからのロボット技術には大きな期待を寄せています。
▼白いロボットが記憶に残る理由を50代エンジニアが考える▼
まとめ|「好き」は形を変えて未来につながる
子どもの頃の私は、ロボットに乗る主人公に憧れていました。
小学生になると、ガンダムを通じてリアルロボットという世界を知りました。
中学・高校ではパトレイバーやFSSに触れ、ロボットを「設計された機械」として見るようになりました。
大学ではカルネージハートで制御の面白さを学び、フロントミッションでリアルな兵器としてのロボットに魅了されました。
そして卒業研究でPWM制御やフィードバック制御に取り組み、「電気」がロボットを動かす重要な技術であることを体感しました。
その経験が、回路設計エンジニアという仕事を選ぶ決め手になったのです。
振り返ると、子どもの頃の夢が、そのまま職業になったわけではありません。
しかし、「ロボットが好き」という気持ちは、形を変えながら私の進路を導いてくれました。
もし今、進路に迷っている人がいるなら、子どもの頃に夢中になったものを思い出してみてください。
その「好き」の中には、将来の仕事につながるヒントが隠れているかもしれません。
そして私はこれからも、回路設計という仕事を通じて、ロボットやものづくりの未来に少しでも貢献していきたいと思っています。
このサイトをもっと知る
monokatsuでは、ゲーム・ロボット・TRPG・エンジニアの視点から、「考える楽しさ」と「ものづくりの面白さ」を発信しています。
興味のあるテーマから、ぜひ他の記事もご覧ください。



